眠れないとき、まず食事を見直す——精神科医が解説する睡眠と栄養の関係

この記事は医療情報の提供を目的としており、医師の診断・治療に代わるものではありません。


「眠れない」の原因が食事にあることがある

眠れない夜が続いているとき、原因として最初に思い浮かぶのはストレスや不安かもしれません。

ただ、精神科の外来で多くの患者さんの生活習慣を聞いていると、食事が睡眠に影響していると思われるケースが少なくありません

「コーヒーを夜も飲んでいる」「夕食が22時を過ぎている」「そもそも夕食を食べていない日が続いている」——こういった習慣が、眠りの質を下げていることがあります。


睡眠と食事の関係:基礎知識

まず、睡眠ホルモンと食事の関係を整理します。

メラトニンとトリプトファン

夜になると分泌が増える睡眠ホルモン「メラトニン」は、アミノ酸の一種「トリプトファン」から作られます。

トリプトファン → セロトニン → メラトニン

という流れで変換されます。トリプトファンは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります

トリプトファンを多く含む食品:

食品特徴
大豆・豆腐・納豆植物性たんぱく質として摂りやすい
鶏むね肉・ささみ低脂肪で消化が良い
牛乳・ヨーグルト朝食に取り入れやすい
バナナ炭水化物も同時に摂れる
マグロ・カツオ良質なたんぱく質源

夕食から就寝まで4〜6時間かかるとされるため、夕食でこれらを意識して摂ると良いと言われています。

カフェインの半減期

カフェインの血中濃度が半分になるまでの時間(半減期)は、個人差はありますが平均3〜5時間とされています。

夕方17時にコーヒーを1杯飲むと、22時には半分程度のカフェインが体内に残っている計算になります。

飲み物カフェイン量(目安)
コーヒー(150ml)約90mg
紅茶(150ml)約30mg
エナジードリンク(250ml)約80〜100mg
緑茶(150ml)約30mg

14時以降はカフェインを控えることが、睡眠への影響を減らす一般的な目安とされています。


食事で見直したい4つのポイント

1. 夕食の時間を就寝2〜3時間前までに

消化が落ち着いた状態で眠ると、睡眠の質が上がりやすいとされています。

22時就寝なら19〜20時の夕食が目安。ただしこれは理想であり、仕事の都合で難しい場合は夕食の量を減らすという方法もあります。

2. 夜遅い食事は「消化しやすいもの」に

帰宅が遅い場合、揚げ物・脂肪分の多い食事は避けたほうが良いとされています。

夜遅くても食べやすいメニューの例:

  • 温かいみそ汁+小さめのごはん
  • 豆腐・納豆・卵などのタンパク質
  • 野菜スープ

3. 夕食を抜かない

食事を抜くと血糖値が下がり、眠りが浅くなる可能性があります。特に夕食を完全にスキップするのは避けたほうが良いとされています。

忙しくて夕食の準備が難しい日のために、すぐ食べられるものを手元に置いておくことが有効です。

4. アルコールに注意

「お酒を飲むと眠れる」と感じる方は多いですが、アルコールは睡眠の後半を浅くすることがわかっています。入眠しやすくても、夜中に目が覚めたり、朝早く起きてしまう原因になります。


食事の改善が難しいときの対応

「わかってはいるけど、食事を整えるのが難しい」という状況は珍しくありません。

そういう場合、一度にすべてを変えようとせず、一つだけ変えることから始めることをすすめています。

  • 「14時以降はコーヒーをやめる」だけ
  • 「週に2日、夕食を宅配弁当にする」だけ
  • 「寝る前に温かい飲み物を飲む」だけ

小さな一つの変化が、体に少しずつ影響します。


睡眠の問題は一人で抱えないで

食事の見直しで改善することもありますが、睡眠の問題が続く場合は専門的なサポートが有効です。

睡眠障害の治療には、薬物療法だけでなく、認知行動療法(CBT-I)など、生活習慣を含めた包括的なアプローチがあります。

こんな場合は受診を検討してください:

  • 2週間以上、眠れない夜が続いている
  • 夜中に何度も目が覚めて、翌日ひどく疲れる
  • 不眠に加えて、気分の落ち込みや不安が続いている

まとめ

  • 睡眠の質と食事は関係している。特にトリプトファン・カフェイン・食事のタイミングが影響する
  • トリプトファンは大豆・鶏肉・牛乳・バナナなどに多く含まれる
  • カフェインは14時以降を控えると睡眠への影響を減らしやすい
  • 夕食は就寝2〜3時間前までに、遅い場合は消化しやすいものを
  • 夕食を抜かないこと・アルコールの過剰摂取に注意
  • 2週間以上続く不眠は専門家への相談を

参考情報

  • 日本睡眠学会「睡眠障害の診断・治療ガイドライン」
  • 「カフェインの科学」—日本食品化学研究振興財団
  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」

著者・監修者情報

長友恭平(精神保健指定医・医学博士)

心療内科・精神科専門医。睡眠と食事・生活習慣の関係を診療の中で重視し、薬物療法と並行して生活習慣の改善を提案している。

この記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。個別の症状については医師・専門家にご相談ください。